日本語教師インタビュー 〜Eさん〜

December 14, 2018
遠藤先生インタビュー

“教材に頼らず、現場で起こり得る状況を想定し、
実戦で通用する生きた日本語を日本人の仕事のスタイル、考え方などと共に伝えていく。”

  • Q)これまでの経歴とコウェルで働くことになったキッカケを教えて下さい。(取材時2018/3時点)

    A)コウェルに入ってから1年半くらいになります。もともと私の妻が会長の廣瀬さんと会社設立の際にサポートしたことが縁で知り合い、社長のクオンさんとも知った間柄でした。一方で実は私とクオンさんは10年以上前に日本語を教える先生と生徒という関係で知り合っていました。私が前の会社を辞めて次の会社を探している際に妻が通して再会したのがきっかけとなり、声をかけてもらいました。
    20代までアメリカの映画に出演する役者を目指していました。30代に入り流石にそれではダメだろうと考え、どうしても海外に出て行きたいという気持ちはありましたが、英語も得意ではなかったので何か武器をと思い、日本語教師の資格を取りました。取得後たまたま働き口として募集があったのがベトナムだったのです。それまでベトナムとは特に縁があった訳ではありません。
    1年間、ベトナムで日本語の教師として半分ボランティアのように年収12万円で働いていましたね。ベトナムが好きになったのもその頃かもしれません。

  • Q)コウェルの第一印象は?

    A)最初の印象はとにかく「若いな!」と思いましたね。特にベトナムのIT企業だからかもしれないですが、イベントも年に何回あるんだっていうくらい頻繁にありますし、社員が皆一つ一つのイベントに100%の力を注ぐのにも驚きました。これは愚痴ではなくて「羨ましい」という気持ちからお伝えするのですが、出し物の練習のために日本語の授業をお休みします。と普通に彼らは言ってきますから。(笑)日本の中学生とか高校生のノリですよね。40代ではその雰囲気に合わせていくのが大変な部分もあります。

    遠藤先生ベトナム日本語教育

    Q)現在コウェルで担当している業務について具体的に教えて下さい。

    A)今はブリッジSE(以下、BSE)レベルの直接お客様とコンタクトを取っている社員を対象に中・上級クラスを担当しています。
    主にマンツーマンレッスンで、もう1名(取材時2018/3時点)の日本語教師と交互にレッスンを受け持っています。今日本語教育に力を入れている社員の対象は、近く日本へ転籍するメンバーです。大体レッスンは通常は週1〜2回ですが、彼らのような渡日組は毎日マンツーマンで30分の日本語レッスンがあります。現時点だと既に日本へ行ったメンバーもいますが6名が対象でしたね。年間20名のベトナム人社員を日本へ転籍させるという会社の掲げている目標もあります。教師側には転籍の2〜3ヶ月前に上から、転籍者の日本語教育追い込みの要請がありますが期間が短いので、教える側としては、もっと計画的に色々カリキュラムを組んであげたいなという思いはありますけどね。
    初級についてはベトナム人講師が基本的に教材が決まっており、授業は教材に沿って行いますが、中・上級では全く異なり、教材も一部使いますが、講師自らプリントやレッスンで使うネタを考えています。 その他、1週間に1回だけ日本人講師による日本語、日本人と触れ合うことを目的として初級レベルを教えることもあります。

    Q)これまで様々な場所で教えてこられたかと思いますが、コウェルと他社の語学教育の仕方に違いがあると感じる点はありますか?

    A)言い方が難しいですが、コウェルアジアの事業の柱は「IT」にあります。それにプラスして日本語が取り入れている形です。なのでよくある語学学校とは授業の目的も教え方も違うのです。日頃の仕事との両立を基本にしていますので、仕事が忙しくなれば、一定期間レッスンがストップすることもありますし、役職者やBSEなど学習のゴール設定が仕事に関連してくるため、どこまで求めるかは学習者の仕事の状況に左右されます。
    でも、意外にも相談内容の多くは語学以外についてだったりします。
    日本へ初めて行く、日本の企業で初めて働く人も多く、日本での生活に不安がある人が多いようです。でも上司には聞けないので周りの現場の人達より私たちの方が聞きやすいのでしょう。日本とは?日本人が好む服装や会社での接客スタイルなど日本のビジネススタイルや生活スタイルに始まり、ビジネス日本語から派生してIT日本語に関する内容が多くなるのも特徴かもしれません。

    日本語教育

    Q)教えている中で大切にされていることはありますか?

    A)特に教えるにあたって私の根本にあるのは、「日本語を好きになって欲しい」という思いがあります。彼らの学ぶモチベーションを下げるようなことはしたくありませんし、学ぶことを純粋に楽しいと思ってもらいたいです。語学学習は一歩間違えれば受身となりがちで下手をすると嫌いになってしまう事さえあります。
    教師ができることは限られていて、人によって意欲の有る無しで上達スピードは変わってきます。自分が日本語を 勉強したくて勉強したくてしょうがないと思ってもらえるようなレッスンの雰囲気作りやその人に合わせた臨機応変のレッスン内容を提供することかなと考えています。ベトナムではテレビや漫画で日本文化に触れる機会は多くありますが、その多くはベトナム語に翻訳されているため、生の日本語に接する機会はYouTubeと私たちのレッスン、仕事上での会話くらいだと思います。アウトプットできる環境としてはさらに限定されますので、是非私たちのレッスンをフルに活用して欲しいですね。



    Q)オフショア開発を検討するにあたり、真っ先に思い浮かぶ懸念点といえば「言語やコミュニケーションの問題」「プロダクトの品質の問題」「技術レベルの問題」を挙げる方が多いですが、Eさんの考えるコウェル流の日本語人材育成の考え方は?

    A)初級クラスはテキストに沿って、文法や単語など基礎的な部分をベトナム人講師によるベトナム語の授業で行われます。会話は基本的に目的ではなく知識をいかに詰め込むかが大切になります。それに加えて、中・上級者クラスでは、インプットしたものをアウトプットする作業になります。これはかなり意識しないと難しいかと思います。
    しかし、コウェルアジアの中・上級者はやはりやる気のレベルが初級者とは違います。何故なら彼らは現場で日本語が必須な中で学びにきていますので必死さがありますよね。私の授業は基本的に予習・復習はありません、それは業務の傍の日本語学習は大変だろうという配慮ですが、授業自体はフリートーク形式です。学習者の悩みに対してのフォローはもちろん、個人の置かれている状況によって変わっていきます。
    彼らが今、必要としている課題、問題を教材にすることが多いです。そういう意味では、実戦で使える生きた日本語を教えています。時には学習者の悩みがお客様からのメール文に書かれており、専門用語が多すぎて説明できない時もありますが・・・(笑)特に顧客とのやり取りは分からないまま、誤解したままにしないよう注意しないといけません。日本人特有の雰囲気で感じ取ってねという部分や主語の省略、ビジネスライクな硬い言い回しなど彼らにとって難しく感じる点は多々ありますから。

    Q)コウェルアジアとして日本語能力N3からN2層を増やすことが至上命題と聞いていますが?、日本語育成プログラムを通じて、一番身につけて欲しいことや期待することは?

    A)会社として私も、そうであるべきだと思っています。正直に言うと試験対策として日本人講師が貢献できる部分は限られてきます。 日本語能力N2、N3は基本的に筆記試験がメインになります。逆にいうと日本で言う英検やTOEICなどと同じである程度テクニックの要素が高得点、合格には必要になってきています。コウェルアジアでは夜に外部から講師をお招きしてN3、N2を対象に試験用のテクニックをベトナム人の先生が教えるクラスがあります。そこで試験対策は基本的に進めていきます。
    しかし、N2、N3の合格者が実際に日本語を話せるかどうかはまた別の問題です。日本語能力試験にはスピーキングはありませんので個人差が出てきますし、点数で目に見えてわかる部分ではありません。そこの部分を日本人講師である私たちがフォローしていきます。相互にコミュニケーションをとる機会を作れば、勘の良い子はキーワードだけでも繋ぎ合わせて会話を成立させることができます。私たちがやるべきはそこの部分を伸ばしていくことだと思います。
    N1でも会話ができなければ意味がありません、やる気さえあればアニメが好きで日本語のフレーズを覚えたり、Skypeで日本人の友達と話したり、知識だけではなくて積極的にチャレンジできるように仕向けていくことが必要です。話したいこと、覚えたいことの内容によって学び方は大きく変わってきますよね。

    Q)仕事と両立しながら日本語学習をするのは難しいことだと思いますが、日頃、モチベーションが下がったり、伸び悩む受講者に何とアドバイスされているのですか?

    A)レッスンの中で日本語を楽しんで学んでもらうよう工夫はしていますが、彼らにとって日本語を使っての業務は私たちの想像以上に緊張感やストレスに晒されていることを知ってからは、あまりテンションを高く盛り上げながら教えると言うよりは、少し息抜きも込めてフラットに接しています。このレッスンの時間だけは少し気を抜いて言いたいことを好きなように言える場であっても良いのではないかと思っています。もちろん全て相談は日本語ですよ。(笑)
    あとは、彼らは技術レベルも高いし、日本語能力もある、ある意味どこの企業でも欲しいと思える人材です。色々なことにどんどんチャレンジして欲しいと思います。だから失敗を恐れずにもっと広い目で自分の今の状況を俯瞰してみると良いと思っています。

    Q)これからの日本語人材育成の戦略と目標があれば教えて下さい。

    A)IT日本語が必ずしもビジネス日本語に当てはまらないですし、10年前の日本のサラリーマンと今のサラリーマンって働き方の意識も含め変わってきていますよね。一つの型にはめてしまうのではなく、エンジニア達と協力して今のプロジェクトの進め方、メールでの言い回し、チャットでの日本語でのやり取り、テキストから読み取るお客様の感情の部分などカバーできるものが一つのカリキュラムあるいはテキストBOOKとして作っていければ良いなと思っています。これを読めばいろんなシチュエーションで役に立つみたいな。日本語のテキストは数多くありますが、それらをカバーできる本やツールは無いので良いと思いますね。

    ベトナム日本語教育
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