本プロジェクトは、長期間にわたり運用されてきたWindowsデスクトップアプリケーションの品質改善を目的としてスタート。
最大の壁となったのは、対象システムは10年以上にわたる機能追加や改修の積み重ねによりコードベースが肥大化・複雑化しており、設計書や仕様書といったドキュメントも整備されていない状態「仕様のブラックボックス化」である点でした。
当時の設計思想を知る開発者も既に不在のため、開発チームは修正の影響範囲を正確に特定できず、機能仕様の把握はソースコードの解析や実機操作による挙動確認に依存せざるを得ず、機能間の依存関係や影響範囲の特定が困難で、不具合の再現性も低い状況にありました。
さらに、リリース後にユーザーから予期せぬ不具合を指摘される事態が慢性化し、内部リソースでは、システムテストの設計ノウハウも不足しており、どこまでテストをすべきかという基準が持てず、エンジニアはコード解析やデバッグに多くの時間を割かれ、新規機能開発や改善施策に十分なリソースを確保できない状況が続いており、技術的負債の蓄積も顕在化していました。
ドキュメント不在という前提条件を踏まえ、「ユーザー操作を唯一の正」とするアプローチを採用しました。
具体的には、『ユーザーマニュアル』や実際の操作ログをもとに業務フローを分解し、テストシナリオを再構築する手法を提案しました。
また、ブラックボックステストを中心にしながらも、必要に応じてコード解析を補助的に活用し、仕様の裏付けを強化。さらに、将来的な回帰テスト効率化を見据え、自動テスト導入を前提としたテスト設計(再利用性・保守性を考慮したケース設計)を実施しました。
品質保証の根拠を明確にするため、テストシナリオとシステムの各機能の紐付けを管理する「トレーサビリティマトリックス」の導入を提示。仕様の曖昧さによる手戻りや認識齟齬を防ぐため、テストケースを単なる検証手段ではなく「実質的な仕様書」として機能させる設計を重視しました。具体的には、前提条件・入力・期待結果を明確に定義し、誰が実行しても同一結果が得られる粒度まで標準化を実施。手動では限界がある回帰テストについて、自動化に適したシナリオの切り出しと、自動テスト環境の構築を盛り込み、自動テストにおいてはUI変更や仕様変更に強い構造を意識し、メンテナンスコストを抑える設計としたことで、テスト資産が継続的に更新され、CI/CDパイプラインとの連携により、開発と品質保証が一体化した持続的な品質改善サイクルの確立を目指しました。
本プロジェクトは、日本側のプロジェクトマネージャーおよびリーダーと、ベトナム側のQAエンジニア(2.0人月)によるオフショア体制で進められました。
実施にあたっては、まずユーザーマニュアルを徹底的に読み込み、ユーザーが遭遇する可能性のある操作パターンを網羅したテストシナリオを構築。次に、トレーサビリティマトリックスを用いて、各機能がどのテストケースで検証されているかを一目で判別できる状態にした後、既存機能のデグレードを防ぐため、回帰テストを自動化し、リリースのたびに高速で検証を回す仕組みを実装。新機能は手動、既存機能は自動というハイブリッドな検証体制で運用しました。
具体的な実施内容は以下の3点です。
ユーザー視点で再構築したシナリオ作成により、実利用環境で起こりうる不具合をリリース前に検知できるようになりました。またトレーサビリティマトリックスの運用により、テストの網羅性が客観的に証明され、開発チームの安心感が向上。自動化の導入は回帰テストの頻度を劇的に高め、長年の課題であった「リリース後の不具合報告」の抑制に成功しました。仕様書がないレガシーシステムであっても、マニュアルと現物から品質を担保できる体制が確立され、品質課題の可視化と改善により現場エンジニアの実務に即したプロセス設計で、再現性と効率性を両立しました。
具体的な成果内容は以下の3点です。
今後は、構築した自動テスト資産を継続的にメンテナンスしながら、新機能追加やOSアップデートへの追従性を高めていく予定です。本プロジェクトで得た「仕様書不在時の検証ノウハウ」を、クライアント内の他のレガシーシステムへ横展開することを検討していきます。
加えて、テスト設計プロセスの標準化やドキュメント整備を推進し、属人化の排除と品質の再現性向上を図ります。さらに、CI/CD環境との連携を強化し、継続的なテスト実行とフィードバックの高速化により、開発と品質保証の一体化を実現していきます。
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