1億会員のID基盤の品質を再定義
7,000件検証で実現した安定リリース体制

導入前の課題

  • 日英混在の仕様により、テスト設計の精度と一貫性が担保できていなかった。
  • リリース直前に重大バグが頻発し、修正によるスケジュール遅延が常態化。
  • テストケース管理が属人化し、品質基準とカバレッジにばらつきがあった。

導入後の効果

  • 6ヶ月で7,000件の検証を実施し、品質の可視化と安定化を実現。
  • 200件以上のバグを早期検出し、リリース遅延リスクを大幅に低減。
  • 英語、日本語に対応した専任チームの導入により、コミュニケーションロスの完全排除と標準化されたテストプロセスにより、再現性と網羅性を向上。
  • プロジェクト概要と課題

言語の壁と後工程依存が招いた品質崩壊

本プロジェクトの対象は、会員数1億人を超えるID基盤を持つグローバルテック企業の認証・会員管理システムの品質検証を担当。
対象領域には、認証API、セッション管理、外部サービス連携、データ同期バッチなど複数のコンポーネントが含まれており、単一機能の不具合がシステム全体の可用性やセキュリティに直結する極めて高難度な環境でした。

現場では、英語を公用語とするグローバル開発チームと、日本語で記述された詳細仕様との間に大きなギャップが存在し、特に、API仕様や例外処理、エッジケースに関する記述が日本語に偏っていたため、非日本語ネイティブのエンジニアが仕様を正確に解釈できず、テスト設計の粒度や観点にばらつきが発生していました。

さらに、テスト工程は開発後半に偏重しており、結合テスト〜リリース直前で重大バグが顕在化する構造となっていたため、結果として、リグレッション対応やパッチ対応が頻発し、CI/CDパイプラインも安定せず、リリースサイクルの長期化を招いていました。また、テストケースの管理が属人化しており、網羅性や再現性の担保が困難である点も大きな課題でした。

  • 提案内容

自動化×標準化で進化するQA戦略

当社では、単なるテストリソースの補填ではなく、品質保証プロセスそのものを再設計するアプローチとして「トリリンガル専属QAラボ」を提案しました。本ラボは、日本語・英語に加え、対象ドメイン(ID基盤・認証・セキュリティ)に精通したエンジニアで構成され、仕様理解・テスト設計・不具合分析までを一気通貫で担う体制です。

具体的には、要件定義および設計レビューの段階からQAが参画し、仕様の曖昧さや矛盾点を早期に検出する「シフトレフト」を実現。API仕様書や画面設計書に対してレビュー観点(入力バリデーション、例外系、パフォーマンス劣化条件など)を標準化し、テスト観点の抜け漏れを防止しました。

また、テストプロセスの標準化として、テストケース管理ツールの導入とフォーマット統一を実施。Given/When/Then形式での記述を徹底し、言語差異による解釈ブレを最小化。さらに、自動化戦略としては、回帰テストのうち頻度が高く安定したシナリオを優先的に自動化対象とし、CI環境と連携することでビルド単位での品質チェックを可能にしました。

加えて、ラボ型契約により中長期的に安定したQA体制を確保し、プロダクトの成長に応じてスケーラブルにリソースを増減できる柔軟な運用モデルを構築しました。

  • 実施内容

手動×自動で加速するハイブリッドQA

実際のプロジェクトでは、日本側PM1名、ベトナム側QAリーダー2名、QAエンジニア7名に加え、自動化エンジニア4名を含む計14名の体制を構築しました。役割としては、QAリーダーがテスト戦略・設計レビューを担当し、QAエンジニアがテストケース作成および実行、自動化エンジニアがテストスクリプト開発とCI連携を担いました。

初期フェーズでは、既存の日本語仕様書およびチケット情報を分析し、テスト観点を再整理。API単位・機能単位でテストケースを体系化し、英語ベースのテストケースとして再構築し、JIRAやTestRailなどのツールを活用し、テスト進捗・バグ発生状況・カバレッジをリアルタイムで可視化するダッシュボードを整備しました。

テスト実行フェーズでは、6ヶ月間で約7,000件のテストケースを実施。特に、認証フローにおけるセッション切断条件や、異常系APIレスポンスに関する不具合など、運用上重大な影響を及ぼすバグを200件以上検出しました。各バグについては、単なる報告に留まらず「再現手順・影響範囲・優先度・修正方針」をセットで提示し、開発チームの修正効率を向上させました。

さらに、週次の品質レビュー会議を通じて、バグ傾向の分析(例:特定モジュールへの集中、特定リリースでの増加)を行い、コーディング規約の見直しやレビュー強化といったプロセス改善提案を継続的に実施。結果として、後半フェーズではバグ検出数の減少とともに、テスト実行効率および品質の安定化を実現しました。

  • 成果

回帰テスト30%削減の品質改革

本取り組みにより、これまで頻発していたリリース直前での重大不具合の検出はゼロとなり、CI/CDパイプラインを含めたリリースプロセス全体の安定性が大きく向上しました。特に、テスト工程の前倒し(シフトレフト)とテスト設計の標準化により、結合テスト以前の段階で不具合を検出できる割合が増加し、後工程での手戻りが大幅に削減されました。

6ヶ月間で検出された200件以上のバグの多くは、認証フローの例外処理、セッション管理の不整合、外部連携APIのエラーハンドリングなど、本番影響度の高い領域に集中しており、これらを事前に解消できたことは、1億ユーザー規模のサービス安定性向上に直結。また、バグの再発防止策として、原因分析(Root Cause Analysis)をベースにコーディング規約やレビュー観点の見直しを実施し、開発品質そのものの底上げにも寄与しています。

さらに、トリリンガルQAチームが仕様理解とコミュニケーションのハブとなることで、開発チーム側の仕様確認・翻訳対応の工数が削減され、エンジニアが設計・実装といったコア業務に集中できる環境を整備。自動化においては、回帰テストのうち高頻度・高重要度シナリオを中心にスクリプト化し、CI環境と連携することでビルド単位での自動実行を実現。これにより回帰テスト工数を30%以上削減するとともに、リリースごとの品質担保を“人依存”から“仕組み化”へと転換しました。

結果として、本QAラボは単なる検証機能に留まらず、品質データの蓄積と分析を通じて開発プロセス改善をリードする存在へと進化し、クライアント企業におけるグローバル品質基準の中核を担うパートナーとして高く評価されています。

今後の展望

今後は、構築したトリリンガルQA体制を継続的に運用しながら、単なる品質担保に留まらず「品質の予測と最適化」へと進化させていく方針です。具体的には、これまでに蓄積したテスト実行結果やバグデータを活用し、モジュール単位・機能単位での不具合発生傾向を分析。高リスク領域に対してはテスト観点の強化やレビュー頻度の最適化を行い、より効率的な品質管理を実現します。

シフトレフトをさらに推進し、要件定義・設計段階でのQAレビューを高度化。仕様レビューにおいては、過去のバグナレッジやチェックリストを活用した「再発防止型レビュー」を定着させることで、バグの“検出”から“未然防止”への転換を図りつつ、最終的には、QAラボを中心としたナレッジ共有とプロセス標準化により、グローバル開発における品質保証のベストプラクティスを確立し、1億会員規模のID基盤においても継続的に高い可用性と信頼性を維持できる体制を構築を目指します。



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